脱大量生産 マスカスタマイゼーションでアパレル業界に変革を。フクル : 木島広 氏 ロングインタビュー

フクル : 木島広 氏 ロングインタビュー

ー フクルさんのある群馬県桐生市は和装時代から繊維産業が盛んなイメージが浮かびますが、現在の桐生の繊維産業の盛り上がりはどのような感じなのでしょうか。

木島広 氏(以下、木島) : 例えば縫製業などは中規模でも10軒ほどで、2〜3人と言ったレベルでやっていらっしゃる外注さんと呼ばれる小規模なところだと100軒ほどはあると思います。

桐生は、西の西陣、東の桐生と言われるほどの高級式織物・帯地(柄を織り込む・ジャガード)の産地(※1)として知られていました。和服から洋服に変わっていく中で、帯地の柄で生地を作るという技術を徐々に洋服の技術に転換していったのが明治から昭和初期ではないかと言われていて、例えば10年くらい前で言うと和装2割、洋装8割に桐生市内での繊維事業の割合も変化していっています。ですが、桐生=帯地と言うものはアイコン的に残していかなければいけないと言うことで桐生織物協同組合には和装と洋装が2つに分かれてあります。

ー 近年では高年齢化と労働人口の減少などの多くの課題があると思いますが、これまでもこれからもフクルさんのモチベーションあげるものとなると考えられているものは何かありますか。

木島: やはり、クリエーションと賃金。これに尽きると思います。

創造的な仕事かどうか、それに対しての見合う給与が払えるかどうか。 縫製業も機械を買って、人数を投下してと言うビジネススタイルから、人数が増やせない分一人頭の生産性を上げていくことが重要で、例えば海外から持ってきた安い消費財(※2)を売るファストファッションと、クリエイティビティの高くて質の高い生産性の高いモノが生き残っていくのではないかと思っています。

「縫う」ということも非常にクリエイティビティな仕事で、一人が全行程を請け負うような職人さんの技術を若い人に事業継承をしつつ、その縫うと言う仕事に対してやりたいと言ってくれる方は多いです。

大量生産の工場よりも生産性が高い分、他よりも給料を払えるということと。自分がやっている仕事が誰に認められているかも重要で、全行程を一人で行うことによって購入してくれた方からダイレクトに評価を受けるということもモチベーションになってくるのではないでしょうか。

コンビニなどで給料が高くてもなかなか働き手が見つからない時代ではありますが、承認欲求・自分の価値をどこに持っていきたいか、目標を持っていても同じビジョンを持っている会社やチームが無いと言う現状があります。

ファッションの現場で急ぎ足ではなく地に足をつけ技術を身に付けて、技術に対する創造性豊かなの人物になってもらうには、その分の対価を払うという事が大切なのだと考えています。

理想論ですが、理想論をやらないと維持できない時代だと考えています。この理想論を何とトレードオフすれば実現できるのか。

今まではITやIoT(※2)がまだまだ繊維産業に対していい影響を与えるところまで来ていなかったと思うのですが、ようやく新しいカタチで活用できるようになってきた。これは縫製工場の現場を40年間見てるからこそ言えるのですが、いい部分も悪い部分も見えていたからこそやっと答えだと思えるものが見えてきたのがここ2年くらいです。

ー オーダーメイドを作ると言うことについて。

木島: オーダーメイドの服に対してお客様が求めている価値は何なのか、大量生産の工場で出来る事とは違う付加価値は何なのかを考えると非常に難しいものではあります。お客様ひとりひとりの対価を下げながら、手元に残る服の価値を下げないと言うことが特に難しいことです。

まず、洋服をサンプルから一点丸縫い出来る人が少なくひとつの工場に1人か2人いるレベル。それを100%にしなければいけないと考えていて、30人いる工場だとしたら30人サンプルから丸縫いできる工場にすれば、当然その工場では大量生産も一着ずつも出来る、フレキシビリティーのある生産工場になります。そしてその100%の工場を全国に増やしていけば、諸外国では出来ない縫製工場群になるので、グローバルでも十分勝負できると思います。

ー 消費者側からすると考えもつかなかった発想で驚きです。

木島: 服作りは技術の差が激しいのですが、先程の100%丸縫い出来る人を育てると言う話を普通の縫製工場の経営者の方とすると、「そんなことは無理」と言われてしまうので私は理想から入っています。

『日本の群馬県の桐生の工場の誰々さんが私のために縫ってくれている』と言うことが付加価値になると考えていて、さらにスマートフォン等で途中経過なども見られるようになったらミシンやアイロンにビーコンを付け、技術者はデバイスを持って何をしているかがデータとしてとれると言うのを開発しています。

お客様に対する楽しさの提供と共にトレーサビリティー(※3)を提供することと、より効率的な作業の解析にも使え、服に対する価値があがると思います。

ー 商品を購入して満足してくれるかということに集約されているわけですね。

木島: そうですね。お客様が洋服を購入して最終的に一番満足する要素は着心地だと思うんですよね。いかにして着心地良い服を提供するかと言えば、『Face To Face』でオーダーメイドで作るしか無いと、それをいかに技術の進歩で補えるかですね。

ー 購入した方には付加価値と言う対価を払って、製造した側にも見合った対価を与えていけばビジネスモデルとして成り立っていくと。

木島: 私と同じヴィジョンを描いている人は数少なく、急成長曲線を描くことはまずないと言うことは予測していますが、積み重ねの事業なので長いスパンで見ても真似するのは出来ないでしょうし後追いがは追いつくのは難しいでしょう。 この事業は縫製工場を日本に置いて、海外から受注をもらって海外に輸出すると言う将来的なビジネスモデルも可能だと考えています。

現状国内でもやっているブランドは数少ないですがやっているところもあります。先程もお話した”職人さんの技術を若い人に事業継承”と言う人材不足にならないようなビジネスモデルを会社のデザインとして組み入れていますが、そこを見誤って投資家目線でお金儲けに走ってしまうと日本のアパレル業界の空洞化は止まらないと思います。

ー 今までオーダーメイドを触れたことがない、オーダーメイドをしたことがない方々に、アドバイスがあればお願いします。

木島: そもそも、私はオーダーメイドだと思って作っていないのです。お客様のサイズに既製服を合わせているだけなんですよね。

将来的にファストファッションとマスカスタマイゼーション(※4)しか残らない世の中だとするのであれば、既製服を個別のサイズに合わせることは数年後には当たり前になると考えていて、それもマスカスタマイゼーションと言う名の既製服になると思っています。

生産のサプライチェーンが日本全国でマスカスタマイゼーション出来る工場群になれば実現可能なんです。ロジスティック(物流)を動かさない事が、環境負荷も低いしコストも低いと考えれば、お客様が注文した近くの縫製工場でサプライチェーン生産してお客様に届けられる将来も近いかと。

『B to B』も 『B to C』も『B to B to C』何でも出来るのが強みでもありますが、なかなか理解されないところはあります。

イノベーションの安売りされてる現状ですが、本質的な産業構造の変革にはなかなか目線が行っていないと思います。アパレル業界は衰退産業で成熟産業と思い込んでいる方が多いと思いますが成長産業として理解されるよう日々奔走しています。

ー ファッションに携わっている私達にも非常に興味深い話をしていただきありがとうございました。更なる展開を楽しみにさせていただきます!

※1 奈良時代から江戸時代以降に発展し、その後独自の技術を高めた昭和初期まで桐生は特に繊維産業で栄えた。 ※2 Internet of Things インターネットをを通じて様々ななことを行うこと ※3 主に食品にもちいられている、商品がどのような経路を辿ったのかということを追跡すること ※4 カスタムメイド・オーダーメイドをマスプロダクション(大量生産)のコンセプトを残しつつ顧客の個別要望に応える考え方

略歴

木島 広 / 株式会社 フクル 代表取締役 株式会社コム・デ・ギャルソンに入社 COMME des GARCONS JUNYA WATANABE でチーフパタンナーを経験後、イオントップバリューにてチーフクリエイティブデザイナーに就任。 その後独立、株式会社Huggyhuggy(ハギーハギー)、翌年 株式会社フクルを設立。 フクル WEBSITE fukule.co.jp/