オープンイノベーションをもっと身近に。 湧き上がる情熱を応援したい

インキュベート・クラウドファンディングサービスの「BOOSTER 佐藤貞行 インタビュー

PARCOが運営するインキュベート・クラウドファンディングサービス「BOOSTER」。サービスを立ち上げた経緯や、情熱、様々なポイントなどを、プロデューサーである佐藤氏に聞いてきました。

ファッションとしての印象が強いPARCOがクラウドファンディングを始めるに至ったキッカケって何だったのでしょうか。

佐藤貞行 氏(以下、佐藤) : 実はBOOSTERを開始する前の2011年から、投資型の「ファイトファッションファンド:FFF」というクラウドファンディングサイトをやっていました。

テクノロジーの進化によるデータ解析により、いつ何が売れるかスピーディーに分かってしまう時代で、それは非常に大切な事ではあるんですが、それだけに頼ってしまうと、どのお店でもスピード優先で店頭には売れ筋の商品しか並ばないことになり、結果として、品揃えが同質化してしまうと思っていました。

リスクが少ないクラウドファンディングの仕組みならば、作り手が本当につくりたい服づくりにチャレンジでき、同質化という課題を解決できるのではないか。もっと面白い、個性的なブランドがあった方が業界全体としても盛り上がるのではないかという考えに至りました。

ただ、投資型クラウドファンディングは案件をつくるのに時間がかかるため、もう少しカジュアルに間口を拡げてやっていきたいと思うようになりました。

ちょっと話はズレるかもしれませんが、ファッションだけで言えばデザイナーはストイックに作るイメージがあり、とてもリスペクトするのですが、もっと色々なジャンルの方々が参加するものがあってもいいのではないかと感じていたのがちょうどその頃だったと思います。

極端な例えかもしれませんが、建築家・高校生・サラリーマン・パティシエさんなどが集まってディスカッションしてもいいじゃないですか。そういった異分野の方々が一緒になって何かを生み出そうとすることも、本当の意味でイノベーティブだと思いますし、逆に突拍子も無い素晴らしいアイディアが出る事が多いように思えます。

またBOOSTERというものは、もっと革新的なことや面白いことに挑戦し、成功することに価値があると思っています。

難しさとしては、趣旨や目的、リターンの内容などをしっかりと考え情熱を伝える必要がありますし、そういった情熱がサービスやモノでのリターンの良さに出てくると思うんです。

そこを乗り越えてこそ、もっと面白い、個性的なブランドに繋がると思います。

簡単に言うと、ファッションの多様性を大切にしたい、トータルでお手伝い出来たらいいな、と思って購入型のクラウドファンディングの「BOOSTER」へ衣替えしました。

購入者というユーザーの意見を聞き、新しいものが生まれ、仲間としての成長にも貢献出来る仕組みはやはりいいですよね。

色んなクラウドファンディングがあるかと思いますが、「BOOSTER」として大切にしているものは何ですか。

佐藤: ありがたいことに元々PARCO自体がマスで売れ筋の商品だけを扱うのではなく、規模の大小問わず個性的なものや情熱的なブランド様とこれがやりたい! という情熱を持って、時にはぶつかり、共に汗をかきながら一緒に成長させて頂き、今に至ります。

だからBOOSTERもそういった信念と全く同じで、これからを創る原石の様な、これから湧き出る泉の様な方々の為に存在したいんです。そして先程もお話させて頂きましたが、多様性を大切にし業界全体を盛り上げたいです。

やりたい人も、応援したい人も、そして私達も、全員が参加してどんな形にしていこうか、どういうものが面白いとか関わる全員で、本当の意味での創ることを続けていきたい。

だから正に、「オープンイノベーション」なんですよね。

ー BOOSTERならではのサポート体制などありますか

佐藤: BOOSTERとして一番良い所はPARCOのBOOSTERチームだけでなく、社内外のネットワークの中から、人やサービスの紹介、ブラッシュアップ、全国のPARCO店舗などのリアルなコミュニティーの場所も提供できることです。

チャレンジされる方はサンプルや構想段階の時点で挑戦する事もできますし、支援したいと考えていらしゃる方からすればやはり実物は生で見たいじゃないですか。

PARCOの店舗であれば、お客様はファッションが好きで感度も高い方が多くいらっしゃいますので、リアルな場があれば、たとえそれがサンプルの構想段階だったとしても、見て触れて五感で感じたいといったニーズに応えられますし、色などの好み、強度問題といったリスクも生産する前に軽減出来て相乗効果も生まれやすいと考えます。

今までの試みとして、プロジェクト開始と同時にポップアップショップを開催した事もあります。成功率には大きく差が出る事を私達も体感しました。

BOOSTERというクラウドファンディングはWEB上のプラットフォームですので、やはりリアルな場と連携出来る事は良い事だなと私達も思ってます。在り方としては、様々なニーズに総合的に応えられる様に、出来る限りフラットで融通が利く存在で居たいです。

では、今までのプロジェクト案件で特に印象深かった、想い入れがあったプロジェクトなどはありますでしょうか。

佐藤: どんなプロジェクトでも精一杯共に挑戦させていただいてます。

個人的にではありますが、印象深かったのは、

【世界に通用する“コンテンポラリーブランド”を目指す! 次代の日本ファッション界を担う正統派ブランド「YASUTOSHI EZUMI ニューヨーク進出プロジェクト。】

ですかね。

江角さんの「ニューヨークで自分の力を試したい。」という強い想いが特に印象が強かったです。

その想いが届いて、江角さんがさらに世界からも注目されるキッカケに、わずかではありますが貢献出来たプロジェクトだった気がしました。

成功した背景としてBOOSTERというクラウドファンディングが時代とマッチしたというのもありますが、まさにプラットフォームを通じてご本人の能力を発揮し、飛躍するキッカケになったプロジェクトだったと思います。

もちろん、プロジェクトが大きい・小さいとかそういった考えではないので、チャレンジ頂いた方々には全力で取り組み、成功するお手伝いをして来ましたし、今後もそういった姿勢は変わりません。

挑戦を考えられている方へ、起案者が押さえておくべきポイントなどありますか。

佐藤: クリエイティブの質・センス・知識・スキルなど、技術的な側面は確かに大切かも知れません。でもそれよりも一番に私達が大切にしたいと考えているのはやはりその人が持っている「情熱や想い」だと思います。

とにかく自分の軸がある人はイイですよね。失敗してもという不安を気にせず、 これをやりたい! もっと面白くしたい! という気持ちがある方に是非挑戦して頂きたいと考えてます。

クラウドファンディングは、実店舗などのショップとの違いとして、ストーリーや背景、世界観も伝えることが出来ます。

トータルでその人自身や生産現場、サービスや物の良さを伝える事が出来るというのが特徴ですから、そういった想いが強くあったほうが結果として上手くいく気がします。また、拍子もない(市場に左右されない)モノが作れるシステムですので、コンセプト段階で作れますし、在庫リスクは無い訳です。

PARCOとしても昔から「インキュベーション」ということを企業姿勢をにしてきたこともあって、「世の中にまだ無い、ある種原石の様な方々の営みをもっと大きな営みにするための私達」という考えは強くありますから、どんな方でも分け隔てなく一緒にチャレンジし成長していく中で色んな事を共有していきたいと考えています。